乱闘騒ぎを起こしたニコガク野球部を、退学にするという村山に対して、川藤が言った言葉。この言葉を残したホーソーンとは、米国の作家ナサニエル・ホーソーン (Nathaniel Hawthorne・1804年~1864年没) のことで、自身の境遇から善悪を扱った宗教的な内容の作品を多く執筆した人物。中でも「緋文字 (ひもじ)」は彼の代表作として知られ、そのような作風から、今回取り上げた言葉が生まれた。彼が言ったこの言葉が意味するように、いかなることに対峙しても、寛大さを持って接することができる「器の大きい人間」になりたいものだ。また、「悪を憎んで人を憎まず」と言った、江戸の火付盗賊改方長官 “鬼の平蔵” こと長谷川平蔵の言葉も、ホーソーンの言葉に通じる真理があると思うが、いかがだろうか。
ちなみに、“正義の花” と聞いて、その対極に “悪の花” という言葉を連想する方も多いと思われるが、“アクノハナ” といえば、フランスの詩人、シャルル・ボードレールの詩集「悪の華」をまず思い浮かべるはず。その耽美的、退廃的なテイストは、後の詩人や文学界に響を与えただけではなく、ゴシック&ビジュアル系バンドの源流にいたポジパン (ポジティブパンクの略) バンドにも及んだ。その一端は、群馬県が生んだビジュアル系バンドの源流に位置する BUCK-TICK の、4枚目のフルアルバムに「悪の華」と命名されていることでもわかる。
ちなみに、当コーナー筆者も、耽美的という言葉に一種憧れを持った過去があり、ボードレール詩集ほか、ジョルジュ・バタイユの「太陽肛門」「マダム・エドワルダ」、マルキ・ド・サドの「悪徳の栄え」、ジャン・ジュネの「泥棒日記」などを手にしてみた。が、高校生の頃の筆者には、少々ハードルが高すぎたようだ…。
話変わって「花」つながりで紹介すると、演歌の大御所、「都はるみ」が歌った「アンコ椿は恋の花」は、団塊の世代のスタンダードナンバーとして、あまり人も有名。また、Jポップファンの間では「くるり」の「バラの花」が知られるところ。曲は直接に知らなくとも、友人が歌うカラオケで耳にすることも多いはず。名曲だ。
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川藤が若菜に対して言ったこの言葉は、中国のことわざ。読み方は「ショウジンカンキョシテフゼンヲナス」。「小人」とは「小さい人=子ども」ではなくて、教養や道徳心の低い人のことを指し、特に中国の儒教の経典「論語」などの中で、君子 (教養や道徳心のある人物) に対して用いられる言葉。ま、教養や道徳心のある人=大人 (おとな) と言い換えるならば、それが低い人=小人といっても問題ないかもしれないが…。ということはさておき、次に「閑居」とは、暇を持て余していることを意味する言葉。よってこの言葉の意は「ろくでなしが暇を持て余すと、不善 (=よくないこと) をするものだ」ということ。
ちなみに日本には、干ばつで困っている山間の村で、村民の苦労も気に留めず三年間なにもせずに寝まくった「三年寝太郎 (さんねんねたろう)」という人物がいたが、古今東西の記録によるところ、彼の場合は暇を持て余していたから三年もの間、寝て過ごしていたわけではないようだ。それどころか、三年間寝続けたある日のこと、突如、山に登ったかと思いきや、大きな石を谷に落として川の水をせき止め、そのおかげで水不足の村が救われたそうだ。この活躍により「ろくでなし」という彼の悪しきレッテルが解消されたのは言うまでもない。余談だが、「閑居」には「世俗を離れて静かに暮らす」という意味もあるが、この意で今回取り上げたことわざを解釈してしまうと、国語のテストでは間違いとなり点数はもらえないので注意してほしい。
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二子玉川学園高校へ着任した川藤が、朝礼のあいさつで安仁屋たち野球部のメンバーに向けて言ったこの言葉は、20世紀に活躍したフランスの小説家・劇作家で、20世紀仏文学の重要作家の一人として知られるアンリ・ド・モンテルラン (Henry de Montherlant・1896年 ~ 1972年 没) が、女性問題を扱った4部作の一つ「若き娘たち」の中で書いたもの。
“夢” というポジティブなイメージのあるものを、“不満足” というネガティブな気持ちがあるからこそ生まれるという、ちょっとひねくれた発想がおもしろい。ちなみに、米国メジャーリーグで活躍する松坂大輔選手は、「僕は人生で “夢” は見ない。あるのは常に “目標” だけ…」と、「夢を見ない男・松坂大輔」という本 (吉井妙子著、新潮社刊) で語っているそうだ。松坂選手は相当に、満ち足りているのだろう…。
また、このモンテルランは、「夫婦が喧嘩するのはお互いに言うことが何もないからである。それは両者にとって時間をつぶす一つの方法なのである」「頭のいい男は良い夫ではありえない、なぜなら彼らは結婚しないから」という含蓄あふれる名言もよく知られるところ。機会を設けて、ぜひ積極的に使ってほしい名言だ。
参考までに4部作のそのほかを紹介すると、「女性への憐憫」「善の悪魔」「癩 (らい) を病む女たち」となっているので、お時間、お暇がある方はどうぞ。
http://www.tbs.co.jp/rookies08/sp_goroku/goroku01.html